
高橋工務店 代表取締役 高橋正人さん(右)とMomohanaya代表取締役社長 荒谷真一さん(左)。日々の水やりや落ち葉掃除などの手入れのほか、年に1度造園会社にメンテナンスを依頼することで庭をきれいに維持できると荒谷さん
広島に自生する雑木で維持しやすい庭を創造
なだらかな傾斜をつけ、自然の山のような風景を思わせる、心地良い庭。高橋工務店代表取締役、高橋正人さんの自宅兼モデルハウスの美しさを引き立てているのが、造園設計家の荒谷真一さんが代表を務める庭づくりのプロ集団、Momohanayaがプランニングを手掛けたこの庭だ。「理想の住まいづくりには、家と家具、そして庭をトータルで考えることが重要」だと考える高橋さんが、信頼する荒谷さんに庭づくりを依頼。「庭は、人生を豊かにしてくれるもの。建築を知ることで、より家を引き立てる庭を作ることができます」という荒谷さんの考えに共感し、実際の建築や図面を共有しながら、この家ならではの庭をつくり上げた。
高橋邸が建つのは、山に囲まれた自然豊かな土地。「周りの風景と違和感がないように、庭の周りには高さのある木を植えました。特に、広島の山に多いコナラやマツ、シデなどを選んでいます。できるだけその土地に自生する雑木や植物を植えることで、環境になじむデザインになるだけでなく、枯れにくく維持しやすい庭になります」と荒谷さん。その土地に自生する植物を選ぶことで、そこに生息する虫や微生物の生態系を崩さないことにもつながるという。「植えた直後は木が弱っている状態なので手入れが必要ですが、10年すれば定着し、庭が自然の森のように成熟した状態になるので、水やりが要らなくなり、虫もつきにくくなります」。
高木の下には、モミジやツツジ、ヤマボウシなどの日陰で育つ低木を植えている。落葉樹は落ち葉の掃除が必要だが、紅葉が楽しめるだけでなく、新緑の頃の緑が鮮やかで美しい。「庭があることで、家をより美しく見せることができ、四季折々の自然が暮らしに彩りを添えてくれます。また、お子さんがいらっしゃるご家庭は、一緒に庭づくりを行うことで、子どもの感性も養われますよね。庭には良いところがたくさんあるので、ぜひ手入れの時間も楽しんでもらえたらと思います」。

傾斜のついた芝生と伸びやかな木々のバランスが魅力


庭に面した大開口が印象的なリビングダイニング。テラス際には、テーブルやチェアを置いて読書などを楽しめるよう、半円状に竹チップを敷いたコーナーを設けている

何のための庭なのか目的から考える庭づくり
「見る」ための庭なのか、何かに「使う」庭なのか、家庭菜園などで「楽しむ」庭なのか―。荒谷さんは、まず目的から庭づくりを考えるという。「高橋邸の場合、見るだけでなく、イベントに使いたいというお話がありました。そこで、庭の中心部は人が集まりやすいようにフラットにして、周囲はリビングとつながるイメージで、なだらかな傾斜を作りました。傾斜があることで、平面的で単調になりやすい庭に、より自然な表情が生まれます」(荒谷さん)。傾斜に沿って配置された石は、元々この土地にあったもの。フェンス側にはモミジなどの落葉樹を、道路側にはシャリンバイなどの常緑樹を植え、葉を目隠しに。
「庭ができてからのほうが、お客様の建築に対する評価も上がっています。庭から家へと風が抜けるのもとても心地良いです」(高橋さん)。家と庭、どちらもあって始めてこの家の本来の魅力を発揮している。

自邸とショールームをつなぐウッドデッキ。周囲の山々を見渡せる眺めの良い場所で、景色となじむサクラを植えた
家の内外からの風景にみずみずしい緑が映える


[1]ダイニングで庭を眺めながらくつろぐ高橋さん。外観や窓の外の景色に多彩な表情を添える庭に、「想像以上のものができました」と大満足。日々のさまざまな瞬間に、庭の緑が豊かさとうるおいを与えてくれているという [2]瀬戸漆喰を採用した2階の白い外壁には、鮮やかなグリーンが映える [3]道路側は常緑樹が程よい目隠しとして機能するため、リビングダイニングの窓にカーテンを引かなくても気にならない。庭の自然との一体感を感じられる建築 [4]2階のホールからは目の前の開口と吹き抜けから庭を眺められる。天井にラワン材を張った木の住まいに、外の緑が調和
庭を家づくりの一部としてとらえると、外と室内との境界が緩やかになる。デッキで食事をしたり、家の中から季節の花木に癒やされたり。それぞれの家族に合った庭が、暮らしに豊かさをもたらしてくれる。

愛犬と一緒に遊べるスペースと周りの風景を取り入れた庭づくりを希望。手入れが簡単な人工芝のドッグランと、庭とつながる屋根付きのウッドデッキを設置した。デッキは6 帖ほどの広さがあるので、夏は日差しを避けながら愛犬との外遊びを楽しむことができる。ほほえましい庭の風景に緑を添えるのが、周辺環境を取りこんだ植栽計画。遠くに望む山並み、隣の公園に立つクスノキの大木を庭の風景の一部とし、アオダモやモミジなどを調和するよう植栽。庭から山までの自然のつながりを室内からも感じられる。

[1]玄関アプローチの小さな庭は、家族や訪れる人を優しく迎えてくれる。雨水の流れの見える鎖樋や濡れると色の変わる石材で、雨の日も楽しめるように [2]程よく囲われた半屋外のウッドデッキ

心地良さと暮らしの質を上げる景色を切り取る窓とデッキ
建物に囲まれた敷地の中で、一番視線が抜ける南側にダイニングと庭を配置。緑を眺めながら食事ができるように庭の景色を切り取る大きな窓を設置した。雑木林をイメージした庭には、高さの違う木や、落葉樹、常緑樹をバランスよく組み合わせ、実のなる木も植えた。虫や鳥が集まる自然の循環を、住まいの一角で感じることができる。また、ダイニングと庭の間に、屋根の架かった広いウッドデッキを設置。外と内の中間領域をつくることで、緑や風を身近に感じながら、朝食や晩酌を楽しむことができる。

[1]片引き寄せで全開放できる窓。庭の緑になじむよう木製サッシにもこだわった [2]キッチンから庭を眺める [3]アオダモを中心に樹種が混じり合い庭と外観が一体に

南を向いて育つ植物の特徴を生かしきれいに見せる北の庭
南北に長い土地の形状を生かし、建物を敷地の中央に配して北と南それぞれに庭を計画した。庭は南を広くしがちなところを、「植物は南に向いて育つ」という特性を生かし、北側をメインの庭とした。
室内からシマトネリコをはじめ、アジサイやジューンベリーなど、季節ごとの一番きれいな植物の姿を眺めることができる。一方、駐車場が近い南側の庭は常緑樹のイヌマキを目隠しに。一緒に植えられた
ヤマボウシが、夏は葉で日差しを遮り、冬は落葉によって日差しを届け心地良い室内をつくっている。

[1]北側の庭は芝生敷きの“遊べる庭”。シラカシの生垣で外からの視線を遮っている [2]春夏秋冬それぞれに実や花、緑の様子を楽しめる


家づくりの一部となる庭。選ぶ樹木や植え方で表情が変わるため、こだわって庭づくりをする人も多い。近年人気が高い樹種について、楽しみ方や手入れの方法などを植物のプロに教えてもらった。

暮らし方や庭の雰囲気をイメージして樹種の選択を
「庭に植える樹木を選ぶ際、まずは大きさや雰囲気などを決めることが大事です」と教えてくれるのは、広島市植物公園技師の久保晴盛さん。和風の庭なのか洋風のガーデンなのかで似合う植物が異なり、日当たりや水はけによっては樹種が限定される場合もある。また、落葉樹であれば、窓際に植えると夏は葉が茂るため日差しが差し込みにくく、冬になると落葉するので、日差しを取り込み、屋内を明るく温かく保てる効果が期待できる。さらに、花が咲くものであれば切り花として部屋に飾ったり実がなるものは収穫をしたりと、樹木によって楽しみ方も色々だ。「家とセットでどういった暮らしをしたいか想像して、庭づくりをすると良いでしょう。植物公園にはさまざまな樹木があるので、実物を見て樹種の選定をするのもおすすめです。今回ご紹介する7種の樹木は、いずれも比較的手入れが簡単。植え付け1年目はしっかりと水やりすることを心がけて育ててみてください」。
常緑樹
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一年を通して緑の葉をつける。枯れ木の多い冬場でも庭に彩りをもたらしてくれる。年中葉を茂らせているため目隠しや日よけの効果も発揮
落葉樹
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冬季や乾季になると葉を落として休眠する樹木の総称。落葉に先立って葉が赤や黄に色づくのが魅力
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ソヨゴ
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ナチュラルな樹形と光沢のあるウェーブ状の葉が美しい常緑高木。樹高はおよそ3~6m程度で、枝を大きく広げることがないため育てやすい。雌株の場合、10~11月頃に赤い実をつける。実は食用不可だが小鳥などが食べにくることも。

アオダモ
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暑さ寒さに強い落葉高木でシンボルツリーとして人気が高い。大きいものは樹高10m以上にもなるが、成長が遅いため剪定でコントロールしやすい。枝を四方に伸ばすためバランスの良い株立ちも魅力。4~5月頃に白い花を咲かせる。

オリーブ
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日当たりの良い温暖な気候を好む常緑高木。シルバーリーフと呼ばれる銀灰色に輝く葉が美しく、初夏に白や黄白色の小さな花を咲かせる。自家受粉ができないため、異なる品種を近くで栽培することによって実をつける。収穫時期は9~11月頃。

イロハモミジ
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春には若葉と小さな花、夏は青葉、秋は紅葉と、四季を通じて変化を楽しめる落葉高木。周りの植栽と調和させやすく、春先の花の後にはプロペラのような種子をつける。水やりは降雨で十分だが、夏場の乾燥には注意したい。

ヤマボウシ
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愛らしい花が印象的な落葉高木。6~7月頃に白い花を咲かせ、9~10月頃に赤い実をつける。中心に小花が集まった形状で、花びらに見えるのは葉の一部。太い根を張るため植え替えが難しく、庭木の場合、場所を決めて植えるのがおすすめ。

ハナミズキ
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ヤマボウシとよく似た見た目で、「アメリカヤマボウシ」の別名を持つ落葉高木。白やピンクの華やかな花を咲かせ街路樹に用いられることも多い。秋には赤い実や紅葉も楽しめる。日当たりの良い場所を好むが、1日中日が当たる場所では夏場の乾燥に注意を。

ジューンベリー
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家庭果樹として人気が高まっている落葉中高木。名前の通り果実が熟すのは6月頃で、生食のほかジャムや果実酒に適している。自然樹高は5mほどになるが毎年の剪定で3m程度に抑えることが可能。花付
きが良く、満開時には見応えがある。
C O L U M N
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編集部PICKS
庭づくりにおいては、土地の環境や自身が持つイメージに合った樹種を選ぶこと、そして、暮らし方や手入れに時間をかけることができるかなどを踏まえて検討しよう。また、樹種によっては成長が早く、大きくなりすぎてしまうものや虫が付きやすいものなどもあるため、まずは建築をお願いしている工務店に相談してみるのも理想の庭を叶えるためには大切だ。
