室内の空気環境を整えることはとても大切です。
人体に悪影響を与えるほこり(※1)がなく、空気の汚れもないすがすがしい環境で過ごすことは、健康的な生活を送るうえで必要不可欠なことです。
高気密高断熱の家は、快適な暮らしを叶えてくれる構造である一方、換気と空気清浄化を万全にしておかなければなりません。
これは法律で義務づけられていることでもあります。機械式換気システムの採用のみならず、ありのままの自然環境に近く、草原の中を通り抜けるようなさわやかな空気環境を実現することが望ましいでしょう。よって、家の間取りをプランニングする際には、窓やドアを開放して自然に換気ができる風の通り道を考慮した設計を心がけることがとても重要になります。
前述した理想的な空気環境を実現するための具体的な方策を考えてみましょう。人の1日の物質摂取量のうち、57%を占めるのが室内空気です。これほど多く体内に取り込むのですから、室内をできるだけ清浄な空気で満たしておきたいもの。そのために、家の周辺は緑の多い環境が望ましく、室内に使う建材は自然環境に近づけてくれる作用をもつ素材、例えば壁なら湿気や臭いを吸放湿する調湿作用のある珪藻土や漆喰などを採用するのが効果的です。最近は空気中の汚れを吸着・分解する塗り壁材もあります。また、高温乾燥でなく低温〜中温乾燥(常温レベルの乾燥が理想的)を経ることで木が本来もつ油分や樹脂成分を含んだ天然無垢材も清浄な空気の維持に寄与してくれます。
一方、建築基準法の改正で2003年から義務づけられた24時間換気システムのフィルター機能により、花粉などをシャットアウトできるようになりました。換気システムの方式には、給気と排気を機械で強制的に行う第1種換気、機械で行う給気によって高まった気圧で自然排気を行う第2種換気、排気を機械で行い、自然給気を行う第3種換気があります。寒いからといって換気を止めたり吸排気口を塞いだりすると結露にもつながるので注意が必要です。また、建物を長持ちさせるため、外壁通気、床下換気、小屋裏通気など建物の駆体内部の通気を確保する対策が取られているかどうかも重要です。
現代の生活において、電化製品はもはや不可欠なものになりました。多大な恩恵を受ける一方で、多くの電化製品に囲まれた暮らしは必然的に静電気や電磁界の影響を受けるものにもなっています。そのデメリットの一つとして、帯電している電子機器はほこりや空気中のちり・ゴミを引き寄せる性質をもつため、電化製品の近くや室内の床にはほこりがたまりやすくなることが挙げられます。
この対策の一つが、「アースを取ること」です。アースとは、地面に打ち込んだ金属棒を通して電気の逃げ道をつくること。昔の家では多くアースが取られていましたが、現在ではその必要性があまり認識されていないこともあり、日本のコンセントではほとんどアースが取れないのが現状です。しかし、アースを取ることで静電気の発生を低減させたり、住む人の身体への影響も抑えることができます。この20年間で屋内配線は約5〜6倍に増えました。こうした現状において、アースを取ることは電気がもたらす便利な生活を享受しつつ、健やかな暮らしを営むことに大きく貢献してくれるものといえそうです。また、電磁界の影響を見極める手段としては、方位磁石が有効です。方位磁石が電磁界の影響を受けず、正しい方角を示すような住まいの建て方、素材の選択をするのが理想です。なお、電磁スパンを用いた電磁波対策も今後の課題です。
室内において、人に当たる風の強さはそよ風のようなゆるいものが人にとって最も心地良く感じるといいます。逆に、エアコンや石油ストーブ、扇風機などによって起こされた強い風は、人にストレスを与えてしまいます。その結果、皮膚の乾燥や無意識の緊張、血管の収縮、末梢血流の血行不良という症状が表れます。実際、高齢者にはエアコンが苦手という人が多いですが、風が直接当たらないようにルーバーを動かして風向を変えることでそのストレスはかなり軽減され、熱中症予防に貢献してくれます。このように、自然な空気の流れをつくることが心地良い空間をつくるポイント。過度の通風を伴わずに室内を暖めてくれる床暖房や薪ストーブなどがその有効な手段の一つです。
最近ではセラミックの遠赤外線作用を利用した最新の冷暖房システムも注目されています。これは、壁・天井とラジエータの表面に特殊セラミック加工を施し、光エネルギーによって体感温度をコントロールするシステム。エアコンのように風を使わないため、直風によるストレスや不快感を感じず、部屋ごとの温度ムラも少なく、一年中家全体をほぼ24℃の体感温度に維持してくれます。風を使わないということはほこりや花粉などを巻き上げることもなく、電気消費量もエアコンの約半分に抑えられ、環境にも優しい冷暖房システムといえます。