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石州瓦がつくる日本の美しい風景

豊かな自然に恵まれた石見地方からうまれた石州瓦。
曲線と直線、陰影、光沢、色合い。独自の美しさを保ちながら
優れた機能性、耐久性、経済性を持つ。美しい日本の家、日本の風景を作る石州瓦の魅力を紐解いてみよう。

 

 

 

 

銀黒色の石州瓦を使用したO様邸。棟の直線と波打つような瓦の曲線が美しい。この家で約3000枚の石州瓦が使用されている

 

 

瓦屋根でも太陽光パネルの設置が可能。O様邸は太陽光発電などのエネルギー創出量と使用するエネルギーの消費量が年間で概ねゼロになる「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業」に認定された

 

 


瓦同士が互いにしっかりかみ合い、屋根に固定されているので風速40mの台風にも耐えられる設計。国内最高品質と呼ばれる所以だ

 

 


O様邸の玄関に置かれていた石見焼の水がめは、江戸後期から明治初期に作られたものと推測される。昔この家で使っていたものだそうで、今となっては貴重な逸品

 

石見の豊かさが生み出した強く美しい石州瓦


石州とは、現在の石見地方の別称で大田市、江津市、浜田市、益田市といった島根県西部一帯を指す。この辺りは古くから石見銀山の鉱物をはじめ、和紙、焼物に使う粘土など、天然資源に恵まれた地域として知られている。石州瓦もこうした石見の豊かな自然と風土から生まれたもののひとつだ。
古くからこの地方の生活の中で愛用されてきた石見焼。漬物壷や水がめなどに使われている石見焼は、石見つのづそう地方に分布する都野津層の良質な粘土を使い、1200度以上の高温で焼くため耐久性に優れ、昔からこの地方の生活の中で長く使われてきた。石州瓦はこの石見焼の原材料や特性、焼成技術を生かしたのである。
暑さや寒さ、積雪や塩害、酸性雨など厳しい日本海側の気候に晒されても、100年以上耐えうる力を持つ石州瓦。瓦は成型後、高温で焼くため赤褐色や鉄砂色(黒)、銀など釉薬の色が落ち着いた色となり、住まいの木材との相性がよく馴染む。石州瓦の家並みが自然豊かな山陰・山陽の風土にしっくり溶け込み、中国地方独自の美しい風景を作り出しているのだ。


家族を癒やす現代的な和の家



当初は改築のためにしおた工務店を訪れたO様。同社が建てる和の住まいを見て新築に踏み切ったとか。室内は杉の無垢材を用いるなど自然素材も多く使用した

 

 


横から見た屋根の形が八の字に配されていることから、毎年8月8日は「屋根の深い軒をつけ、住む人を日差しや雨、雪日」とされているそう。O様邸もきれいな「八八」を描いていた

 


深い軒をつけ、住む人を日差しや雨、雪から守る玄関アプローチ。ゆったりした空間には風格が漂う。軒を支える梁と柱もどっしりと太い

 

 

木材の表面にかすかな凹凸を付けたうづくりの廊下は、玄関の陽を受けてできた影が美しい。足の裏に伝わる感触が温かく柔らかいのが特徴だ


家族の暮らしを守る丈夫で力強い家

安芸高田市を中心に展開するしおた工務店は、地元の木材を使用しその土地に合った家作りをモットーとしている。2016年7月に完成した安芸高田市のO様邸は、周囲を川や田畑に囲まれた延床面積45坪のゆったりとした和風建築。明治以降、代々この地で暮らす旧家で、この度完成した住まいはご夫婦とお父様の3人が暮らすための家だ。屋根瓦はもちろん石州瓦を使用した。「黒というより、いぶし銀のような渋みのある瓦が整然と並ぶ様が気に入っています」とご主人。屋根は切妻という形状で、棟(むね)と呼ばれる頂上の直線や波打つように並ぶ様が、どの角度から見ても美しい。「その地域で作られた物が、その地域の住まいに一番ふさわしく美しいと思います」と石州瓦の魅力を話すしおた工務店の塩田崇社長。冬は雪深く寒さが厳しい安芸高田市にあっても、住まいを暖かく包み込み、これから50年60年、もっと長くこの家と家族を守っていくだろう。

 


しおた工務店代表取締役塩田崇氏

取材協力/しおた工務店広島県安芸高田市甲田町高田原1212

TEL0826-45-3658

 

石州瓦の魅力

多彩なデザインで洋風住宅にも

石州瓦は、現代の暮らしに合う洋風住宅用デザインも豊富だ。モダンでシンプルなフレンチスタイルにはシャープで落ち着きのある外観を生み出す『平板瓦Fタイプ』。また『S瓦タイプ』は明るい地中海をイメージ。色や形状も多彩に揃う。

 

 

長期的に見ると断然オトク!

一般的に10年おきに塗り替えが必要な金属製や化粧スレート等の屋根と比較すると、石州瓦はほとんどメンテナンスフリー。ほとんど劣化や色褪せなどがないので、塗り直しや葺き替えの必要がなく、30年以上の長期的なコストを見ると経済的な屋根と言える。

 

独自の製法による高い機能性

石州瓦の一番の特徴は耐久性だ。雨、積雪、日射、風、潮風など過酷な気候条件でも50~60年、それ以上劣化をすることなく住まいと家族を守る。その機能性の高さは原材料となる都野津層の粘土と、1200度以上という焼成温度の高さにある。

 

石州瓦は互いにがっちりかみ合う組み合わせ構造。山陰に吹き荒れる強風にあっても、瓦のめくれやズレを最小限にとどめる

石州瓦の重い屋根が建物を大地に押し付けるので、躯体さえしっかりしていれば、地震の揺れにも強さを発揮する

風や地震に強く耐久性がある上、断熱、防露、遮音といった二次的性能も優れている。このため住まいの快適性や省エネにもひと役

石州瓦はメンテナンスフリー。20年後では、瓦屋根が断然お得です。

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