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広島の木の家リノベーション特集

工務店社長が語り合うリノベーションで叶う広島の町づくり

 

中古物件を購入し、自由にリノベーションをする若い家族。また親の遺した家を住み継ぐシニア世帯。今、中古の一戸建てリノベーションのニーズが高まっている。現状は、問題点は、理想の家づくりは。地元の工務店社長4人がアツく語る。

 

しおた工務店 代表取締役 塩田 崇氏

橋本建設株式会社 代表取締役 橋本 英俊氏

株式会社池芳工務店 代表取締役 後藤 和彦氏

株式会社大喜 代表取締役 柿田 勝司氏

 

 しおた工務店 代表取締役 塩田 崇氏

広島県安芸高田市に拠点を持ち、主に県北の自然に囲まれた家づくりを得意とする。塩田氏自身は大工一筋50年の先代の姿を見て育ち、県北の気候風土に沿う昔ながらの日本家屋の良さと、現代のお客様のこだわりに沿った家づくりを目指している。一級建築士、一級施工管理技士、宅地建物取引士などを持つ。

施工エリア/広島市、安芸高田市、三次市、庄原市、東広島市、世羅郡

 

橋本建設株式会社 代表取締役 橋本 英俊氏

創業は明治5年。「長く住み続けてもらえる家を造る」ことをモットーに、広島市安佐南区で事業を展開する。木造りの家にこだわりを持ち、地域産の木材を厳選。自社で大工を育成するなど技術力にも自信を持つ。5代目の橋本氏自身は二級建築士、宅地建物取引士、住宅断熱施工主任者、住宅ローンアドバイザーなどの資格を持つ。

施工エリア/広島市、呉市、東広島市、廿日市市、大竹市、安芸高田市、安芸太田町(安佐南区から車で1時間ほどの地域)

   

株式会社池芳工務店 代表取締役 後藤 和彦氏

家族に安らぎを与える天然木や漆喰などの自然素材にこだわり、煉瓦積みにも自信を持つ。住む人の安心、安全、丈夫で長く住める家を目指している。住宅のほか保育所などの教育施設、公共施設、ビル建設も手がける。後藤氏は一級建築士、古民家鑑定一級、宅地建物取引士、増改築相談員の資格を持つ家づくりのスペシャリスト。

施工エリア/広島県全域、山口県の一部

   

株式会社大喜 代表取締役 柿田 勝司氏

広島市安佐南区において、天然木や安芸珪藻土など自然素材を用いて快適な住まいを提供する工務店。太陽や通風、熱などをうまく室内に取り入れるパッシブデザインを提唱している。また大工や左官など職人の育成にも力を注ぐ。創業は1962年。柿田氏は二級建築士、耐震診断士、増改築相談員などの資格を持つ。

施工エリア/広島市、大竹市、廿日市市、安芸太田町、北広島町、安芸高田市、呉市、東広島市、三次市(営業所から車で1時間ほどの地域)

 

 「リノベか、新築か」多くの人は迷っている

 

編集部 中古の一戸建てのリノベーションについて、現状を教えてください。

柿田 築20年以上経った一戸建て中古については住宅性能を上げることが先決ですね。まずは断熱性、気密性、通気のバランスを良くして住み心地を良くする提案です。「暖かい家に住みたい」という要望が一番多いですから。

橋本 断熱性、気密性、通気の3つの兼ね合いでしょうね。家づくりにおいてこの3つの認識や施工技術は10年前と比較すると段違いに向上しています。

後藤 当社は外張り断熱と二重通気を組み合わせる、ソーラーサーキットという工法を取り入れたところから、高断熱な住宅建設の取り組みを始めました。いろいろ研究し、現在はそのころと比べても格段に気密・断熱+換気の性能が向上していますね。

塩田 当社は県北が施工エリアなので、中古住宅といえば古民家が多いです。古民家で一番多い要望でもあり、大切なのはやはり断熱・気密性を上げることになります。

柿田 耐震性については例えばリビングや寝室だけ耐震性を上げてシェルター的にしておきたいという考え方はアリですけどね。

橋本 建築基準法が改定された1981年以前に建てられた木造家屋の多くは、国土交通省が定めた現在の耐震基準を満たさない物件が多いはずです。その後、80年代に入っても耐震という概念が曖昧だったような気がしますね。そうした家屋に対して、現在、国土交通省が掲げる耐震性「1.0」(※1)に沿う工事と、リフォーム工事を合わせて2000万円以上かかる場合があります。そうなると新築したほうが良いケースもありますよね。新築が難しいようであれば家族が最も集う部屋のみ耐震性をあげるというやり方で地震に備えることも可能ですね。

後藤 築26年の私の自宅を高断熱+高気密+耐震補強工事をしたんですが、新築時と同じ費用がかかりました(笑)。

一同 かかります、かかります!(笑)

塩田 一戸建て中古リノベを検討中のお客様にも「新築にしたほうが良いでしょうか」と相談をされます。それはね、結論から言うとお客様の愛着のある家なら多少費用がかかってもリノベーションをしたほうが良いし、そうでなければ新築にしたほうが良い。つまりその家がどれくらい好きか、どれくらいまでなら費用が出せるかなんですよね。

柿田 お客様から「新築を建てるべきか、リフォームにしようか」という相談は地元の工務店だから受けられる相談だと思っています。私たち工務店は新築とリノベーションの両方を施工していますからそれぞれのメリットや問題点を一緒に考えられるし、提案もできます。新築を主体とする住宅メーカーに相談すると「新築です」って即答されちゃうよね(笑)。私たちは選択肢を与えられる工務店でありたいですね。

 

(※1…床や壁の仕様、筋交いや接合部の状態(保有耐力)÷地震動や地盤、壁などの配置(必要耐力)から算出した上部構造評点。「1.0」は大地震の揺れに対して「一応倒壊しない」とされる耐震性を持つ)

 

 

 

物件購入とリノベは1本化した方が効率的

 

 編集部 一戸建て中古とひと言で言っても、例えば中古物件を購入してリノベーションをする若い世代と、相続した家をどうするかという50歳以上の世代の、2つに分かれるのではないかと思います。まず中古物件をリノベーションすることについて、最近の傾向はありますか。

柿田 リノベーション前提で中古物件を探される場合は購入する前に、私たち工務店に相談してほしいと思います。購入前に物件を見ることができたら、どの部分にどの程度の工事が必要かなど、予算も含めて一緒に考えられるからです。

橋本 購入前、工務店に物件を見せてくれる不動産屋さんは少ないかもしれませんね。不動産屋さんは物件を仲介することが目的かもしれませんが、私たちは快適な住まいを提案することが目的です。物件の状況や工事内容を把握し提案していますからね。

後藤 できれば事前に床下や躯体の状態などを見ておくのがベストですね。そうでなければ予算との兼ね合いで家づくりの要望が消去法になってしまいます。

橋本 先に物件を購入してしまうと不動産の住宅ローンと、金利の高いリフォームローンの2本立てになりお金が無駄にかかってしまいます。工事費を念頭に置いて、物件を買った方が良いでしょうね。

 

 

30年先の暮らし方を視野に入れた住まいを

  

柿田 家は買うことが目的じゃなくて、住むことが目的。自分たちが出せる費用の範囲内で工事内容を決めて、物件を購入した方が良いと思います。そういう意味では物件とリノベーションを別々に考えるのではなく、1本化した方が良い住まいができると思います。当社は不動産屋さんと連携をして、当社に相談に来られたお客様に、「この物件ならこういうリノベーションができる」という提案ができる仕組みをつくりたいと考えています。不動産屋さんも住み手のニーズに応えたいという考え方になっていっていただけるとうれしいですね。

橋本 一戸建ての中古リノベをする場合、まず資金計画をした方がいいですね。先に予算を決めておかないと、不動産+リノベーション費+諸経費など足し算をしていくと必ず予算オーバーになってしまいますから。柿田社長のおっしゃるように1本化すると予算が立てやすいですね。20、30年後にはメンテナンス費用もかかりますしね。それと業者を選ぶ際、マンションリノベを中心にしている業者さんと、我々のような工務店とでは少しタイプが違っていると考えた方がいいと思います。マンションリノベは断熱性や耐震性を考えなくても済み、室内リノベに特化していますから。

後藤 床下、躯体、住宅性能など、一戸建ての住まいについては工務店のほうが経験や知識はあると思います。これからは一戸建てリノベーションの情報をもっと紹介する場が必要ですね。お客様の住み心地の良い家を提供するためには、実際に高性能な住宅へ改修工事をされたお客様の声や、改修後の住み心地などの情報をもっと発信していかないといけませんね。

 

家は「買う」ことが目的ではなく「住む」ことが目的

柿田 勝司氏

 

一戸建て中古リノベの情報をもっと広く、たくさん届けたい

後藤 和彦氏 

 

 

 

 

親の家をどうするか広島にも広がる空き家問題

 

編集部 親の不動産を相続したというケースはいかがですか。

柿田 先祖代々受け継がれた家を、自分の代で手放すことへの心苦しさを感じておられるケースが多いですね。だからといってその家に住む予定もなく、どこに相談していいか分からずそのままにしているという方が多いんじゃないでしょうか。そして家賃保証のある賃貸経営という方向に向かってしまうような気がします。でもそういうケースこそ、地元の工務店にご相談いただきたいですね。だってずっとその地域に根差して家づくりをしている地元の工務店は嘘はつかないし、そういった事例の勉強もたくさんしていますから。

橋本 土地に建物がある限り、固定資産税が1/6まで優遇される特例があるため、解体しない方が得だという考え方もありますよね。全国の空き家のうちリノベーションすることが難しいものが全体の6割くらいではないかと言われています。現在は先祖のお墓でさえ管理ができなくなってきているのに、親の空き家までとても管理ができないという現実なんでしょうね。県北や島しょ部は特に顕著だと思います。

後藤 全国的に2019年から世帯数が減っていくと言われていて、広島市内にもこれから空き家が増えていくでしょう。私たちも広島県工務店協会の会員はもちろん、行政や宅建業界団体と情報共有するなどの仕組みをつくっていかなければと思います。

 

 

空き家の活用にも無限の可能性があるはず

 

編集部 県北はどんな状況ですか。

塩田 県北は土地の値段が安く、100坪の敷地に古い家がついて200万円で売りに出ているというケースもあります。家が大きいから修繕費も大きく、そうした家に2000万円かけてリノベーションするニーズがどれほどあるかという話ですよね。2000万円使うのであれば、もっと良い場所に物件は見つかるし、あるいは新築をする方が良い、という結論になりますよね。見た感じですが、集落によっては半分くらいが空き家になっているように見受けられます。

橋本 空き家バンクにたくさん物件はありますが、我々のできることとして、その空き家を僕らが買い取ってリノベーションして販売したところで、買い手があるのかと思うと、なかなか踏み出せないですね。古民家に暮らして田畑を耕して田舎暮らしをしたい、というニーズがあれば良いですけど、なかなか難しいですね。

塩田 実家の空き家の活用について、どうしていいか分からない場合も不動産屋さん任せにせず、まずは私たち地元の工務店に問い合わせてほしいですね。処分するにもリノベーションするにも、あらゆる活用法を勉強していますし、空き家問題はこれから僕らが取り組んでいかなければならない分野だと痛感していますから。

編集部 今日お越しの4社をはじめ、広島県工務店協会では、新築だけでなく、リノベーションについてもお考えで、自社で職人を育成されています。今後、中古一軒家のリノベーションにも一層注力されるとのことです。益々の活躍をお祈りします。

 

同じ思いのある不動産屋とタッグを組めば空き家問題に解決の道はある

橋本 英俊氏

 

「空き家をどうしていいか、分からない」そんなときこそ地元工務店へ相談

塩田 崇氏

 

【取材協力】

今回、座談会の場となったのは株式会社大喜が所有する広島市安佐北区安佐町大字久地にある築35年のリノベーション物件。敷地540坪、建坪80坪の家屋には、シアタールーム、自然素材体感ルーム、広い庭を持ち、2018年4月に完成予定。完成後は大喜の体験型ショールームとして活用予定。空間ごとにスタイルの違うリノベーションを見ることができる。

 

お問い合わせ先

株式会社大喜

0120-963-462

 

リノベーション体感モデルハウス

広島市安佐北区安佐町大字久地1183

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